長い間、確執がある状態でした。
お互いに意見が食い違うので、結局話すことも
ない状態のまま、20代半ばで家を飛び出ました。
その後、結婚を機に歩み寄りを試みましたが、違いは埋められず、
過去の思いに囚われて、関係は修復できませんでした。
長い間ほとんど縁が切れているような関係性でしたが、
四年ほど前から、人生をよりよくするための学びを進めていくうちに、
過去に起きたことは、全て必要であり、
それによって自分が大きく学べていたことに気づきました。
上手くいかないことが、だれかや環境のせいでないことに気づきました。
私が小学生の頃は、よく父は勉強を教えてくれました。
いい点数をとると褒めてもらえるのが嬉しくて、一生懸命頑張りました。
でも、だんだんに周りも勉強を始め、
自分の成績が悪くなっていき、あまり褒められなくなってしまいました。
期待に応えられない自分が情けなかったし、父にも申し訳なかったです。
その後は、 父と母の不仲に巻き込まれるような形で、
子供ゆえに事情がわからないまま、長い間父を悪者にして生きてきました。
学びを進めた今は、それは夫婦の問題であり、私個人して父への思いは別にあるのだと
いうことに気づきました。
私自身の中には、 父に可愛がってもらいたいという願望がありました。
不思議です。あんなに嫌っていたのに、本当は甘えたかったのです。
その頃、自分の幼い頃の記憶が度々フラッシュバックするようになっていました。
父の膝の上に座るのが好きだったこと、
一緒に散歩いたこと、
父の大きな背中が大好きだったこと、
何十年も忘れていた思いがハッキリと蘇ってきました。
父が嫌いだと思い込んでいたけれど、本当は父が好きだったのだと。
「長い間失ってしまった、父との時間を取り戻したい。」
その思いで、ゴルフを始めることにしました。
実は、家を出る前にゴルフを始めた時に、父が嬉しそうにゴルフのことを教えてくれました。
でも、素直になれなかった私は、父の指導は聞き入れませんでした。
そして、ゴルフの難しさにぶち当たり、やめてしまったのです。
勇気を出して、「お父さんと、一緒にゴルフに行きたい」と父に報告しました。
もう、随分前にクラブも手放していたので、新しいクラブと、手袋、ボール、
一通りのウエアを買ってくれました。
まるで子供がたくさんおもちゃを買ってもらったみたいな気持ちになりました。
こんな風に父に何かを買ってもらうのは、40年ぶりです。
ちょっと申し訳ないような、いい歳してるのにと恥ずかしいような気もしましたが、
素直に甘えてみると、私の中にいる小さな自分が嬉しそうでした。
何かが少し埋まった気がしました。
実際にコースへ行く前に一緒に練習を何度かしました。
父に「変な癖をつける前に、プロに習う方がいい」と言われ、レッスンを受けました。
初めて行ったレッスンは、
練習場の専属のコーチのグループレッスンでした。
ゴルフについて全く知識のない状態なので、とにかく言われるがまま
クラブを振りました。
私は元々運動オンチなので、見兼ねたコーチは、私の背中側から二人羽織のように
私のクラブを動かして、クラブをあげる位置やタイミングを教えてくれるのですが、
どうしたらいいのか一向にわかりませんでした。
この方法で上手になる気が全くしなかったので、(実際に進化なし)
今度は、練習場の専属コーチではなく、
マンツーマンでしっかり教えてくれるというコーチをネットで探しました。
そして事情を話し、すぐに個人レッスンお願いしました。
はじめは、地味な練習ばかりで、7番しか使いません。
これでコースに出られるのか?と不思議に思いましたが、確実に少しずつですが
上手くなって行きます。
二人羽織のような練習は必要ないのか聞いてみると、
ゴルフは体に触れなくても教えることができますと言われ、
教え方にこんなにも差があるのかとビックリしました。
状況に応じて、覚えた方がいいこと、覚えなくてもいいことを教えてもらったので、
運動オンチの私もなんとかコースデビューすることができました。
緊張はしましたが、
「とにかくすごろくゲームだと思って楽しく前に進めばいいです」と言われて、
チョロした時は、1が出たな。
割合ゴロゴロ転がったら、4が出たなと
前に進むだけのゴルフでしたが、
私の目標は、父との時間を取り戻すことでしたので、
プレーできているだけで幸せでした。
初めての父とのラウンドは、色々な嬉しさがありました。
ゴルフ場で、キャディさんに、私のことを紹介するのに、
「チビ」と言っていたのに驚きました。
もう、40も過ぎているのに、チビって…。
言われたキャディさんもびっくりしていましたが、
それくらい、私と父の関係は、
私が小さな頃に止まったままだったのです。
父もまた、私とのゴルフを喜んでいてくれる。
止まった時間を取り戻せる。
新しい関係性へ変わっていける。
父がまだ元気な時に仲直りできた。
弟と父と三人でラウンドできる。
父に甘えられる理由ができた。
一度は諦めたゴルフを再開して、生涯スポーツにできる。
本当に特別に嬉しかったです。
初ラウンドのスコアは散々でした。
随分おまけしてもらって、150くらい。
カートに乗れず、ひたすらリアルすごろくのように
芝の上を歩いてクタクタでしたが、
でも、気分は最高で、
帰りに一緒にクリームソーダを飲んだのがとても嬉しかったです。
今は、2.3ヶ月に一度くらい一緒にラウンドしています。
先日ベストスコア113が出ました。
父に内緒で練習していたので、ビックリしたようで、
「すごくうまくなったなぁ。この調子で練習していけばいいぞ」と褒められて、
小学生の頃に褒めてもらった嬉しさを久しぶりに思い出しました。
ゴルフは簡単なところが1つもありません。
知識も必要ですし、コツコツ練習もいるし、戦略、想定外な実践の難しさや、リカバリーへの意識の持ち方など、究極の臨機応変スポーツですね。
でも、初心者の私でも、充分に楽しめます。
やって見て、上手さだけではなく、どう楽しむか?が大切だと感じました。
私が学んだ、よりよく生きるための学びと重なるところがたくさんあって、
まるでゴルフは人生の縮図みたいです。
コーチが離脱率が高いスポーツだと教えてくれましたが、反対にトリコになる人や、
生涯スポーツとして続ける人がたくさんいるのも納得です。
まだまだ始めたばかりですが、体力がそれほどなくても、
可能性の拡大ができるスポーツは、とても魅力的だと思います。
可能性を引き出してくれたコーチに心から感謝しています。
私も父も心身共に健康で、いつまでも一緒にラウンドしたいです。